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ナイトライド・ストーリー

Chapter 63

このところ、急激に景況感が悪化している。欧州のソブリンリスク、米国の住宅債権問題、中国等新興国の景気減速が原因だが、つまるところ、全ての原因は2008年9月15日のリーマン・ショックと名付けられたマネーゲームによる損失に帰結する。それは、そもそもない筈の需要が本来の姿に戻っただけなので、政策的になんとかなる話ではない。人間は、過ちを繰り返す動物なので、誠に人間的な行為と言える。

結局、エコポイント等の景気刺激策による反動減ということもあって、リーマン・ショック後より更に状況が悪化した。行政の余計な借金が増えたということだから理に適っている。ただ、3年間の猶予期間ができたということで、ソフトランディングという役割は果たした。日本のバブル崩壊期に、新聞の株式欄が真っ黒になり、株価が2日下落して、1日上昇ということを繰り返したが、現在も同じ状況にあり、日経平均株価は、リーマン・ショック後の安値を下回った。

私は、世界各国で起きているドタバタ劇を見て、日本はそれほど悪くないと、改めて見直した。バブル崩壊を20年前に経験した教訓が生きている。それは円高という形で現れているが、これは国力を表すものであり、韓国のウォン安と対照的である。金融機関の経営破綻が起きないのも円高のお陰か。確かに輸出という観点からは、半導体に続いて、家電、自動車というお家芸でも日韓逆転が懸念される状況ではあるが、日本のGDPが高まるなど悪いことばかりではない。

私は、以前、リーマン・ショックにつながった原因は先進国の怠慢に起因していると書いた。即ち、先進国がイノベーションを怠り、新しい技術、サービスを生み出せずにマネーゲームに明け暮れているうち、新興国が技術的に追いつき、製品の差別化が図れなくなった。今流行のiPhone等タブレット端末は、既存技術の寄せ集めに過ぎず、製造は台湾、中国で行われている。ところが、主要部品は、日本製ということで、改めて日本の技術力の高さが際立った。最終製品1万円として、米国の企業が日本製の部品を8千円分購入して中国の工場で加工費1千円で組み立てて海外に輸出したとすると、表向きの輸出額は、米国1万円、日本8千円だが、実質の取り分は、米国:日本:中国=1:8:1となり、日本のひとり勝ちとなる。これは、過去、日本製品が貿易不均衡の矢面に立たされ、バッシングにあった頃を思い返せば、実にうまく立ち回っているように見える。実際には日本製の比率はもっと低いが、貿易統計だけでは、国力を計ることはできない。

弊社の今年度上期の売上、利益共前年度を上回る見込みで、リーマン・ショックを挟んで4年連続して増収・増益を続けている。景気の影響を受けずに業績を伸ばすことができる理由は、最先端技術に他ならない。従って、景気回復のキーワードは、最先端技術だ。私は、最近、ある事に気付いた。それは、最先端は意外と身近にあるということだ。なぜなら、どのような最先端技術も初めは小さな山の先っぽに過ぎない。それが段々積み上がって大きな山になる。具体的に言うと、UV-LEDは、窒化物半導体の一種に過ぎない。そして、その歴史は20年程度に過ぎないが、照明に応用されると、いきなり半世紀以上の歴史のある照明産業の最先端に位置することになる。電球、蛍光灯という大きな山を下から見上げると、とても登れそうにないが、自分の積み上げて来た山が、いつの間にか、隣の山の先端に飛び移る、若しくは、隣の大きな山が崩れ落ちるようなことが起きる。イノベーションとは、そのような事かもしれない。

今の不況を乗り切る鍵は、イノベーションしかない。モノ真似ではなく、最先端技術をこつこつ積み上げる事ができるかどうかにかかっている。

平成23年 9月27日

リーマン・ショックから3年経って思うこと

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