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ナイトライド・ストーリー

Chapter 27

私は、前章にて現政権に厳しいことを申し上げたが、これはリーダーシップ論をわかりやすく説明したかったのと、なんとか日本を良い国にしたいと心の底から願うからである。国のあり方は経営と密接に関係する。日本の株式市場が低調なのも、海外の投資マネーが、日本を見放しているからだ。

また、以前にも述べた通り、中国、台湾、韓国、そして欧米でさえ、国策としてLED産業を振興し、研究開発、設備投資に援助を惜しまない。それが、各国の産業競争力の差となって表れている。折角、青色LEDで世界の先陣を切った日本のLED産業だが、このところ、アジア、欧米メーカーが日本を上回りつつある。これは、日本の予算配分に密接に関係している。企業でも、研究開発費の比率が低く、福利厚生に手厚い企業は、将来的に事業が尻すぼみになることが予測できるように、国も予算配分を見れば将来性が予測できる。愚かなことに日本では、「尊い命」という印籠(インロウ)を携えた社会保障費に膨大な予算が振り向けられ、医療費、介護費という名目の無駄使いがなされている。

確かに、介護、医療の現場は、壮絶を極める厳しい労働環境であると想像できるが、製造業の現場は、それを遙かに上回って壮絶を極める。わかり易く言えば、介護は、誰もがやりたくない仕事だが、金は確実に国から支給される。一方、製造業は、新製品を開発し、発売しても、売れない場合のリスクは、すべて自己負担である。だから、設備投資とそれにかかる人件費は、徹夜しようが重労働しようが、売れなければ回収できない。だから、製造業を支援してくれと申し上げているのではない。そもそも、そのような補助金は、使い方が甘くなり、うまく生かされない。だから、我々もなるべく使わなくて済むように努力している。ただ、国の立場に立って将来を考えた場合、社会保障と新産業育成のどちらを重視すべきですかと問いかけている。

医療、介護は、そこで消費されただけの経済波及効果しかないが、新技術、新産業創出にかけられた予算は、将来、何百倍、何千倍になって帰ってくる可能性がある。現在の国の予算配分を公平に見た場合、社会保障費が歳出の40%を占め、新産業創出に係る予算がグラフ上に表れない程少額といった不公正な予算配分を早く是正しましょうと申し上げたい。両者が同じぐらいの比率でもおかしくない。そもそも国民は、役人が自らの天下り先を確保するために介護事業をでっち上げたのではないかと疑っている。

私は、コムスンの折口雅博氏を上場前に徳島に招いて講演をしてもらったと書いたが、上場直後の講演も聞いた。その時、折口氏は、「日本の役人は素晴らしい」と以前とは違う発言をした。ベンチャー企業の経営者というのは、大なり小なり、アンチ体制的発言に終始するものだが、この意外な発言に、胡散(ウサン)臭さを感じたことを鮮明に記憶している。

民主党の主張する地域格差是正の意図する中身がよくわからないが、従来のような一次産業や公共工事へのばら撒きを意味するならノーだ。そして、経済発展なければ福祉政策なしというような、明確な優先順位が必要だ。世界中の何処にも800兆円もの借金を抱える国はない。国の財政が健全化するまで、社会福祉を大幅に縮小する荒療治が必要だ。借金で社会福祉を行うといった愚行を早くやめさせなければならない。新規産業創出で財政に余裕ができたら福祉政策を進めればいい。兎に角、採算を合わせることが最優先である。参院選後、民主党が、早速、提出してきた郵政民営化凍結法案、テロ特措法延長反対といった勘違いを見て、民主党には、期待できないと落胆した。ご承知の通り、郵政民営化は小泉政権が解散総選挙で、国民の圧倒的支持を得て進めた改革だし、テロに関しても、日本だけが国際平和を他人任せにしておく訳にはいかない。こういった感覚のずれは、民主党にとって致命的だろう。

最も戒めなければならないのは、票を獲得するための国民のご機嫌取り政策、従来のようなばら撒きを煽る風潮である。そのばら撒きの財源が、赤字国債で賄われ、つけを将来の子供たちに押し付けるといった愚行だけは止めさせなければならない。

年金問題、横領、裏金問題等、行政機関の呆れた実態が次々に明らかになるのは、不愉快ではあるが、行財政改革の成果と評価すべきだ。今までそのような実態さえ掴めず、表沙汰にしなかった政権には、明らかに責任があり、それは過去に遡って当時の責任者を追及すべきである。小泉前首相が「自民党をぶっ壊す」と言ったように、利権をむさぼってきた政治家が自民党内にいることは確かだが、一方で高い志を持った優秀な政治家もいることも確かだ。だから、自民党にしか改革は断行できないと申し上げた。ただ、私が恐れているのは、折角、小泉政権がレールを敷いた改革路線が、今回の参院選のつまずきで後退し、従来の利権にしがらみを持った政治家の勢力が復活することである。国民は、そうなれば、次回の衆議院選挙で、明確に意志を示すだろうが、最近の自民党の様子を見る限り、改革に逆行しているように見える。

安倍首相は、誰が何と言おうが、政権を全うするいという強固な意志を示したのであれば、政治生命をかけて、改革路線を実現して欲しい。そのためには、自らの口から、どのような改革を実行し、その先には、どのような成果が得られるか、そして、その改革には、どのような痛みが伴うかを国民に説明しなければならない。船の船長は、針路を自分で決め、その進路に横たわる困難を予測し、自らの指揮でそれを乗り切らなければならない。それができないなら、船長はやめるべきだ。自ら招いた窮地だが、なんとか乗り切って欲しい。

ところで、地方格差と言われても、正直あまりピンと来ない。それは、地方の場合、物価が安いので、生活実感として貧しさを感じないのと、豊かな自然、人との触れ合いなど、お金に換算できない豊かさに溢れているからだ。車通勤だから、通勤地獄もなければ、帰りの終電を気にする必要もないなど、生活のし易さといった意味では、地方の方が豊かとさえ感じる。むしろ、地方で生活していて格差を実感するのは、民間と行政の給与格差だ。地方の大部分を占める中小、零細企業の従業員は、年収300万円~500万円であり、公務員の年収400~600万円に対して大きな開きがある。血の滲む思いで毎日必死に戦っている民間従業員よりも公務員給与が上回るのは、どう考えても納得できない。これは格差というよりも不公平と言った方がよいが、この不公平は早急に是正すべきだ。

今回の年金問題で国民が怒っているのは、このように恵まれた待遇の公務員の呆れた実態が明らかになり、怒り心頭に達しているのだ。以前から指摘されている通り、民間がリストラの厳しい試練に曝されているのに、公務員だけ蚊帳の外という訳にはいかない。公務員のリストラなくして消費税を含む増税なしである。改革待ったなしの状況である。一日も早く、改革を断行して欲しい。

平成19年9月9日

9が並ぶ苦しい日本の現状について

Chapter27 (続編)

Chapter27において安倍首相の今後に期待すると書いて、いきなりの辞任だったので、続きを書かざるを得なくなった。今回の辞任の理由をいろいろと推理してみたが、真相は民主党の仕組んだ陰謀に違いない。大昔に読んだ星新一の短編小説で、ライバル企業にスパイを送り込んで、そのスパイがどんどん出世してライバル企業の社長になるという一編を思い出した。小説では、最後、スパイを送りこんだ企業の思惑通りには行かなかったように記憶しているが、現実は小説より奇なりである。安倍首相は、首相の地位にまで昇りつめながら、当初のシナリオを忠実に守り、所信表明演説直後に辞任し自民党を崩壊へ導いた。これは、昨今の低俗バラエティ番組で、頭の弱いタレントが常識クイズに、チンプンカンプンな回答をして、視聴者に優越感を与える、あのレベルに近い。学歴低下著しい若者に、俺も総理大臣になれそうだと、優越感を与えた功績は大きい。

冗談は、さておき、私は、26章において、こんな人が、いつまでも首相を続けられる組織はどうかと申し上げたが、組織としても機能不全に陥っていることを、完全に暴露してしまった。自民党として続投を認めるという甘さがこの結果を生んだ。企業においても、2世が後継に任命され、うまく行かなかった例は枚挙に暇がないが、企業の人事部が新人採用で、サラブレッド(血統の良い学生)の採用を躊躇するのも同じ理由に基づいている。どうしても、周りの環境が本人を甘やかすので、人物が育たないのだ。

私も自民党に期待するという気持ちが、今回の件で完全に覚めた。首相を含む閣僚が6人も辞めて、そのまま自民党が政権を握ることは許されない。早期に解散総選挙に臨み、国民の意志を確認して欲しい。私は自民党の支援者ではないが、改革路線を強力に推し進めるために、政策を支持し、そう申し上げてきた。しかし、ここまでお粗末な茶番劇を見せられて、更に自民党を支持するつもりはない。むしろ、ねじれを回復して政治を機能させるには、衆議院においても民主党が第一党になる方がよい。自民党が、このような自滅の道を歩んだことは、考え方によってはよかったかもしれない。衆議院で可決した法案を参議院で否決するという堂々巡りを続けても進展はない。前編にも述べた通り、日本は今危機的状況になりつつある。返済の見込みのない膨大な借金が増え続け、企業は、明らかに国際競争力を失いつつある。このような難しい局面において政府の役割は重要だ。この際、多くを望んでも仕方ない。民主党に政権を担わせてみてはどうか。このように考えれば、安部首相の、「私が職を辞することが、現時点で国にとって最良の判断」というのは、正しい判断と思えなくもない。

平成19年9月14日

安倍首相の突然の辞任について

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