Chapter 229
パリで講演した。ウクライナ、イランでの紛争もあってフライト選びに苦労する。イラン紛争は3ヶ月経っても解決の糸口が見えないが、安かったので早期終結を期待してドバイ経由のエミレーツ航空をおさえていた。ところが外務省の渡航警告も出ていたので直前にキャンセル、運良くエールフランス航空CDG直行便が空いていて安くおさえられた。島国日本にいると国際情勢に疎くなるので生の緊張感が感じられる海外出張は重要と考えている。また、L.A.の大きな講演会よりも主催者が講演者を選別するこじんまりした講演会の方が効率的に業界動向をつかめる。今回の講演は紛争の影響で参加者の集まりが悪く、リサイクル、環境、光学の3分野の合同開催となり、普段聴けない講演が聴けて興味深かった。イーロン・マスク氏のお友達のカナダの大学教授は、マスク氏が地球の滅亡を信じて真剣に火星移住を考えていることから、解決のためには爆縮が必要だと主張した。爆縮は原子力爆弾の起爆に使われる技術だが、要するに核戦争を防ぐためにはそれと同程度の爆縮が必要ということで、じゃあ爆縮はどうやって引き起こすのかという結論が自然農法という哲学的解釈だった。私は、講演後、意見を求められたので、科学技術の進歩は発展途上にあって、その過程では廃棄物やエネルギー消費の無駄が多くなるが、確実に無駄を減らしつつある。究極の未来像は廃棄物ゼロ、エネルギー回収率100%という完全サイクルを目指している。従って、科学技術の進歩にこそ解決の糸口があるのではないかと話した。ある程度、豊かさを経験した先進国の富裕層には自然回帰という発想は受け入れられる余地があるかもしれないが、全世界83億人が自然農法では暮らして行けない。私たちが開発するマイクロLEDディスプレイを搭載したARグラスは、TVどころかスマホ程度のディスプレイも必要としなくなる。せいぜい縦15mm×横30mm程度の透過型ディスプレイ2個でフルカラーの映像が楽しめるばかりでなく情報端末としてAIと連動して調べ物、ナビ、健康管理も行へるようになる。ディスプレイサイズの小型化は、廃棄物の量を減らせるばかりでなく、エネルギー消費も格段に減らせる。バッテリー自体が超小型化され充電時間も短く済む。単にエンターテイメントや利便性といった面だけでなく、たとえば、望遠、顕微という機能を付加すれば超人的視覚や聴覚も身につけることができる。身障者の機能補助という意味でも画期的製品になる可能性がある。
科学技術の進歩は、20世紀以降、公害、労働者の人権問題等多くの弊害を生んできた。しかし、人類は、それらの問題と立ち向かいながら今に至る。電動化の流れはエネルギーの効率的消費の観点からも必然と言っていい。排気ガスを撒き散らしながら飛ぶジェット機や内燃機関はエネルギー回収という観点からも非効率極まりない。AIの脅威が顕在化しつつある現代において、意志を持つAIが人類の愚行を地球の脅威と判断するのはSF映画の中の話では済まされなくなった。現在の科学技術の力では資源やエネルギーの完全リサイクルは不可能だが、人類がそこを目指して日夜努力している姿をAIにも見せる必要がある。
そのための自然農法はありかもしれない(笑)
令和8年6月1日
PARIS講演で思ったこと


